電子移動

溶液内での2分子間における電子移動反応速度は、Marcus理論で表すことができる。
\Delta{G}_{\text f}^{\ddag}=\frac{(\lambda+\Delta{G})^2}{4\lambda}

ここで\Delta{G}_{\rm f}^{\ddag}は活性化ギブズエネルギー、\lambdaは溶媒の再配向(再配置)エネルギー、\Delta{G}は系のギブズエネルギー変化を表す。

絵で表すとこんな感じ。

手書きですまん。
左の放物線が反応原系(電子移動反応前)のポテンシャル曲線で、右の放物線が生成系(電子移動反応後)のポテンシャル曲線をあらわすとする。図に示した原系と生成系のポテンシャル差が、系のギブズエネルギー変化\Delta{G}である。原系から生成系へ系が移る(反応が進む)ためには、\Delta{G}_{\text f}^{\ddag}の活性化エネルギーの壁を越える必要があり、これが反応障壁となる。


再配向エネルギー\lambdaとは、以下のようなイメージ。

溶液内で電子移動する2分子は、それぞれが電荷をもって存在しており、その周囲に溶媒が安定な形で配向している(原系として安定である状態)。電子移動反応が起きると、2分子のそれぞれの電荷状態に変化が起きる。したがって、周囲の溶媒の向きがそのままでは不安定な状態になってしまう。そこで、溶媒が向きを変えて安定になることが必要だが、向きを変えるにはエネルギーが要る。このエネルギーを再配向エネルギーという。
図示していないが、右の生成系のポテンシャル面の底からまっすぐ上に線を伸ばし、原系のポテンシャル面との交点を得るとき、その交点の、原系の底からの高さが再配向エネルギーの大きさに相当する。



一方、反応速度を表すアレニウス式は
k=A\exp\Biggl(-\frac{\Delta{G}_{\rm f}^{\ddag}}{RT}\Biggr)
(A:定数)
だから、上式と合わせて
k=A\exp\Biggl(-\frac{(\lambda+\Delta{G})^2}{4\lambda{RT}}\Biggr)
となる。

これに従うと(\Delta{G}<0とする)、

(0<)\lambda<-\Delta{G} \lambda=-\Delta{G} \lambda>-\Delta{G}(>0)
\Delta{G}_{\text f}^{\ddag}>0
\Delta{G}_{\text f}^{\ddag}=0
\Delta{G}_{\text f}^{\ddag}>0

反応速度は\lambda=-\Delta{G}で極大値をとり、それより\Delta{G}が大きくても小さくても、反応速度が低下する。
特に、|\Delta{G}|(エネルギー差)が大きいときは、エネルギー差が大きいにもかかわらず速度が遅くなる現象がみられ、これを逆転領域(異常領域)という。

しかし、電極反応の場合、加える電位差を充分に大きくしていっても、電極反応速度が遅くなるような逆転領域は出てこない。

これは、酸化物と還元物がともに溶液にある場合と異なり、電極では常に電子が密に詰まった電子の準位が存在するからである。

(途中)
i_{c}=c\int{A}\rho(\varepsilon)f(\varepsilon)\exp\Bigl[-\frac{(\lambda-\varepsilon+F\eta)^2}{4{\lambda}RT}\Bigr]{\rm d}{\varepsilon}