フィックの第1法則

ある流体(液体や気体、場合によっては固体)があるとする。流体に溶けているある物質に注目する。その物質が、ある部分は濃く、別のある部分はうすい(濃度差あるいは濃度勾配がある)状態だと、その物質が流体の中で動き出す(流れが生じる)。逆に言うと、流体のなかの濃度が均一であった場合、それによる物質の移動は生じない。物質の動きは、いつも濃度が濃いほうから薄いほうへの向きである。

その濃度勾配による流れを定量化していくために、まずフラックスという概念を導入する。
フラックス(流束、記号J 。次元はg・m-2・t-1)とは、「単位時間当たりに、単位面積を通過する物質の量」と定義される。
フラックスの駆動力は濃度勾配であり、濃度勾配が大きいほどフラックスの絶対値は大きい。つまり、濃度勾配の絶対値とフラックスの絶対値は比例関係にある。ただし、フラックスの向きは濃度が濃いほうから薄いほうへ力が働くため、濃度勾配とは正負の値が逆になる。
J=-D\frac{dC}{dx}
ここでD は比例定数であり、拡散係数(次元:m2・t-1)と呼ばれる。またC は流体中の物質の濃度であり、x は注目する濃度勾配と直交する軸上の値である。つまり\frac{dC}{dx}は、物質の濃度の位置微分であり、すなわち濃度勾配を意味する。